居心地が悪い。悪すぎる。
童子に封印されている前鬼はちらりと後ろを見た。
そこにはロキがいる。だが、ロキじゃない。
ロキであって、ロキではない。
別人なのに本人。本人なのに別人。
二重人格者のロキが創り出した防御人格獅鬼。
海のように蒼い瞳は、血で塗り潰したような鮮やかな紅。
そして。
「なんだよ?久し振りに出てきたってのに、んなツラしゃあがってよ」
「何が久し振りだ。最近でてきただろーが」
タイムスリップ事件で出て来た獅鬼は何時の間にかロキから取って代わっていた。小
明は逃げるように買い物に行ったので、現在ここには自分と獅鬼しかいない。
獅鬼が前鬼の隣にやってきて、うつ伏せになると、ふにふにと前鬼の頬っぺたを突
く。
「何しゃあがる!!!!!!」
怒った前鬼は獅鬼の手を払う。獅鬼はむくりと起き上がると前鬼の頭を鷲掴みにし、
自分のほうへ引き寄せると後ろから腕を回して頭の上に顎を置く。
「放しやがれぇ!!!!!!」
ジタバタと暴れるが非力な童子姿では叶わず無駄な抵抗に終った。
「暖けぇなお前。やっぱ、ガキの姿だからかね?」
「知るか!!!!」
尚暴れる前鬼。獅鬼はクスクス笑うと次はどう遊んでやろうか?と思案する。
が。
『―――――――――――!!!』
「!!?」
獅鬼の頭に直接響く大音量に獅鬼は堅く眼を瞑った。
ロキの声だ。
『あんだけ頑丈な牢屋に閉じ込めてやってのに……!!』
もう破ったらしいロキはさっさと替われと頭の中で怒鳴っている。
さすが主人だ。獅鬼の潜在能力と呪力はロキの方が上回っている。
「しゃーねぇ」
獅鬼は前鬼を解放するとバタ、と仰向けになった。
「ったく、ちったぁ遊ばせろっての」
獅鬼は紅い眼を閉じた。と、次に開かれた時の眼は蒼い。
「ったく、獅鬼の奴…」
ロキは上体を起こすと前鬼の頭をグシャグシャと撫でた。
「何もされてないようでよかったよ」
「された!!!!」
前鬼は立ち上がって顔を真っ赤にして怒った。
「何を?」
ロキが本気で判ってないらしく前鬼に聞いたが、前鬼はさらに怒って大きな足音を立
てながら居間を後にした。
≪終≫
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