DREAM おまけ
仲睦まじく眠る男女を前に、いくら何でもこのままにしておくのはマズいだろうと思い至った和尚と栗林。
何とかせねば、と考えてはいるが状況が状況なだけに起こす側としてはかなり勇気がいる。
「栗林、2人を起こしなさい。」
「ぼぼぼ僕がですか―――!」?」
「お前以外に誰がおるんじゃ?」
「和尚様」 指さし!
「うっ……わ、儂は〜その〜〜…。」
口篭る和尚。言い訳を考える。
「! そうそう、今日の星座占いに“寝た子を起こす様な行動は慎みましょう”と書いてあったんじゃ。 だからムリ♥」
「メチャクチャ怪しいですよ。可愛くないし。」
「嘘ではない。儂の愛読している月刊ミリタリーに載っとる占いは良く当たるんじゃぞ。」
(注:忘れている方・御存知ない方の為に念のため解説しますが、和尚は軍事マニアです。)
「何か益々嘘臭いですね。しかも星座占いって女子高生じゃあるまいし。」
「余計なお世話じゃ!」
話が脱線している2人。
「そんな事よりもどちらが御二人を起こすか、
公平にジャンケン勝負で負けた方が起こすという事で。」
「うむ、良かろう。一発勝負じゃ、いくぞ栗!!」
「臨む所です。」
「「じゃんけんぽん!」」

和尚→グー
栗林→パー

「やった〜、僕の勝ちです。」
「…。何か、パーに負けるのは嫌な気分じゃのう。」
「何です、その引っかかる言い方は…」
「う〜む、負けたとあっては仕方が無い。起こすとするか。」
「あっ、誤魔化した。」

和尚はおもむろに近付き2人の寝顔を交互に見やった。
しばし考えた後、まず小明を起こそうと声を掛ける。
「小明! これ、起きんか小明!」
全く反応が無い。
「前鬼様も起こしてみてはどうでしょう、和尚様。」
「…分かっとるワイ。」
だが、起こし辛いのが本音。
(前鬼殿は寝起きが悪そうだし気が進まんのう。)
逡巡しつつも起こしてみる。
「(小声で)前鬼殿、朝ですぞ。起きなされ。」
「声が小さいですよ、和尚様。」
「前鬼殿は耳が良いからこの位で丁度良いんじゃい!!(怒)」
「何逆ギレしているんですか(汗) もっとちゃんと御二人を起こして下さい。」
「ハイハイ。(全く栗は五月蝿いのう) 小明。前鬼殿。夜が明けましたぞ。
目を覚ましなされ。」
しかし、
「……。目を覚まさんのう…。」
「本当に…。」
しばし考える2人。
「揺すってみましょうか?」
「じゃな。」
そうと決まれば前鬼…では無く、小明を起こしにかかる和尚。
彼女の肩には前鬼の腕がまわっているので、頭を揺すってみる。
「小明、目を覚まさんか!!」
「ん…う〜ん…。」
「あ!!起きそうですよ、和尚様、」
「よし! 小明―! あ〜さ〜じゃ〜ぞ――!!」
「うるせぇ―――!!!(怒)」
ドゴォッッ!!!
「ぐふっっ…!!」
目を覚ましたのはやはり聴力優秀な前鬼だった。しかも寝ぼけている上に機嫌も悪かった。
安眠妨害甚だしいとばかりに振るった腕が和尚の腹部を急襲!!
その肘は見事に鳩尾を捕えていた。
前鬼にとってはフルパワーの一割にも満たない位の”撫でた”レベルのものであったが 人間の、しかも老骨の身にはかなりのダメージである。
口から盛大に泡を吹きながら崩折れる和尚の元へ栗林が大急ぎで駆け寄った。
「和尚様!?しっかりして下さい!!」
だが、白目を剥いて悶絶している和尚には安否の声など届くはずも無い。
「ダメだ…完全にオチてる。(汗)」
あまりにも悲惨な様子に青ざめながらもう1人の当事者に目を向ける。
邪魔者を排除して再び気持ちよさそうに眠っている姿はあまりも和尚と対象的だった。
恐るべし!!肘ヴァジュラ!!

30分後
和尚を介抱する傍ら、朝食(と言うより昼食)の支度を整えた栗林の
「お食事の用意ができましたよ――。」
という声で前鬼はいともあっさり起きて来た。
そして前鬼が身動きした事で小明も目を覚ましたが、 タオルケット一枚羽織っただけの自らの状況にパニックを起こし、 前鬼を相手に大騒ぎしたが彼の必死の弁明と徐々に蘇って来た 昨夜の記憶によりタンコブ1つで許された。

更に15分後
ようやく騒ぎの治まった二人と共に食卓を囲んだ栗林が居間の片隅に横たわる人物に話し掛けた。
「こんな事なら初めからこの手で起こせば良かったですね、和尚様。」
前鬼の肘鉄の威力凄まじく食事が受け付けられない程のダメージを負った和尚には それに返答する余力も無い。
目の前で繰り広げられる団欒風景に孤独を感じつつ和尚は思った。
―もう、二度と寝ている前鬼殿には近づくまい!!― と。

END