まりメラメリクリ小説 ぶるてりあ子さんより[HP

明日からは冬休み。
終業式を終えた教室は活気で溢れ、生徒達はウキウキとした様子で校門を出ていく。
中には厳しい評価のついた成績票を貰い足取りの重い生徒もいたりするのだが、この物語の主人公・浅葱まりんはもちろん前者である。
成績は前回よりほんのちょっぴり良くなった。
今日は晴天で気持ち良いし、何と言っても明日から冬休みで大好きな長屋の皆と一日中一緒にいられる。
それに今年はもう一人、冬休みを共に過ごしたい人が出来た。
「メラン…こっちのお正月はきっと初めてだよね…。」
まりんが生まれるよりもずっとずっと昔にクレイスを追ってファニーワールド(地球)にやって来たメラン。
その彼が任務そっちのけで年末年始を満喫したとは思えない。
地球の行事・習わしも知らない彼には何もかもがが初めてではないかと思われた。
凧揚げ、かるたに双六、お餅搗き。彼と一緒に過ごす冬休みを想像するだけで楽しくて仕方がない。
想像に顔を綻ばせたまりんが鼻唄を歌いながら帰り支度をしていると可愛らしい呼び声と共に一人の少女がやって来た。
「まりんちゃん、一緒に帰ろ。」
くるくるとカールした髪が愛らしい少女・如月萌である。
両手には冬休みの宿題プリントが詰まった自分のバッグを持っている。
まりんは何度も縫い直された自分の手提げにプリント類を素早く入れながら笑顔で答える。
「うん、帰ろ。あ、そうだ !  萌ちゃん、明日一緒に冬休みの宿題やらない ?」
「うん! じゃあ私お菓子焼いてくるね。」
「あは〜ん ! 楽しみ♪」
それもまたお休みならではの過ごし方である。
二人は仲良く手を繋ぎ楽しそうに家路に着いた。

「ただいま〜。」
長屋へと戻ってきたまりんは元気良く家の扉を開けた。
しかし、開けたすぐ目の前に壁があった。
白い壁と蒼い壁が目の前に ? 
「まりん…、おかえり…。」
「Oh〜 ! ! まり〜ん ! ! おかえりなさいデース !  ! 」
テンションの差が激しい出迎えをした2つの壁がまりんを見降ろしている。
蒼い壁ことメラン・ブルーと白い壁ことマイク・ホワイトはお互い向き合う様に立っていた。
「二人共、こんなトコに立って何してるの?」
まりんが不思議そうに尋ねると二人が(というかマイクが)慌てだした。
「べ、ベツにアヤシー事はな〜にもしていまセーン〜 !  ! メッラーンと “ セカイジジョー ” について語りあっていただけデース。そうデスね ! ? メラン !  ! 」
まりんに気付かれない様にウインクを送ってくるマイクだが…
「…あ…、……。」
メランは固まっている。
とっさの事に言葉が出てこなかったメランはコクンと首だけ動かして返答を返した。
二人の様子が不自然な気もしたまりんだが
「ふ〜ん…」
と言っただけで深くは追求はしなかった。
「と・こ〜ろでスクールはどうだたデスか〜 ? 」
マイクがそれとなく話題をかえた。
「うん。少しだけど前より成績が上がったんだよ♪明日は萌ちゃんと一緒に宿題もやるんだ ! 」
「Ohー ! イイお話デ〜ス !  ! まりィんがスタディがんばッてるからきっとサンタさンも来てくれるデスよ !  ! 」
サンタと言いながらマイクはメランに目配せする。
メランも相槌を返してそっと部屋から出てると翼を展開し何処かへと飛びたって行った。

そして次の日。
今日は萌との約束の日である。
「こんにちはー。まりんちゃんいますかー ? 」
「はーい ! いらっしゃ〜い萌ちゃー……ん ! ? 」
勢い良く戸を開けて萌を出迎えたまりんは目を丸くした。
彼女の隣には“アロマ君”こと亜呂真が今川焼きを手に立っていたからだ。
「やぁ ! 今日和まりんちゃん。」
「え ! ? アロマ君がどうしてココに ! ? 」
二人の顔を交互に見ているまりんに
「実はすぐそこのたばこ屋さんの前でアロマくんに会って…」
と萌。
「そう、それでまりんちゃんと宿題をするって聞いたんで僕も仲間に入れてもらえないかと思って、ね。」
にこやかにアロマは微笑んだ。
「うん、そうだね。三人でやった方が楽しそうだし。二人供あがって。」
まりんは二人を中へと招き入れた。
長屋の人々が囲む大きな食卓に座った三人は桃井三姉妹が出してくれた飲み物と一緒にアロマの今川焼きと萌が焼いてきたクッキーを頬張りながら宿題に取り組んだ。
しばらくするとアロマがこんな話を切り出した。
「もうそろそろクリスマスだけどまりんちゃんはプレゼントを準備してるの?」
質問された少女は目をパチクリとした。
「私もさっきこの質問をされたんだよ」
ふふっ、と笑いながら萌が言った。
「メランさんには何かあげるのかい?」
再びアロマに聞かれてまりんはハッとする。
「あ…あたし、メランに何も用意してない…」
どうしよう…と呟きうつ向いたまりんにアロマと萌が言った。
「大丈夫だよ、まりんちゃん。まだ時間があるし今からでも間に合うよ。宿題が終わったら皆で何が良いか考えよう。」
「うん、メランさんきっと喜ぶよ。」
「萌ちゃん。アロマくん。ありがとう。」
まりんは二人の思いやりに感謝した。
更に次の日、メランがマイクや御納戸と何やら相談事をしているのを見かけた。
しかし、まりんはまりんで彼のプレゼント作りを始めていたのでいつもの様に好奇心一杯に近寄って行く事はなかった。

そして迎えた12月24日。
今日はクリスマスイブ。
長屋では桃井のおばちゃんズがご馳走の準備に追われていた。
長屋の皆もお祭り好きの血が騒ぐのか早くから起き出して作業をしており、部屋の中は新聞紙や広告チラシを輪っかにして繋げた飾りやクリスマスツリーの絵が描かれた紙でデコレーションされパーティ仕様になっている。もちろんまりんも早起きしてプレゼント作りに没頭していた。
「出来たー !  ! 」
手にした縫い針を裁縫箱にしまったまりんは嬉しそうに手の中の小さな袋を見つめた。
「やっぱりモトばあちゃんみたいにはいかないけど…あたしにしては上出来かも。」
最近は綻びた衣料品のほとんどを自分で繕っていたおかげで満足のいく仕上がりである。
「あとはアレを作れば完成ね。」
裁縫箱を片付けたまりんは最後の仕上げをするべく台所へと向かった。
夕方、長屋の食卓には数多くの料理が並んでいた。
「わぁ !  ! 美味しそうね。」
仕事から帰ってきた純がご馳走を目にして驚きの声をあげる。
「スゴいでしょ ! ? 桃井のおばちゃん達が頑張って作ってくれたの〜♪」
まりんはとろけそうな顔をしている。
「まりんちゃんがお手伝いしてくれたからよ」
「大助かりだったわ」
「ありがとね」
ひとえ・ふたえ・みつえに口々にお礼を言われ
「エヘヘ…」
とまりんは照れる。
「それじゃあ、まりんちゃんとおばさん達のご馳走が冷めない内に皆を呼んで来ないとね」
純の言葉にまりん達はうなづいた。

今夜の夕食はいつにも増して賑やかだった。
「ほう ! これは旨そうじゃわい !  ! 」
「スペシャルディナーデ〜ス !  ! 」
「今夜はいっぱい作ったから皆遠慮しないで食べてちょうだい !  ! 」
「いただきま〜す !  ! 」
「よ〜し今夜は飲むぞ〜 !  ! 」
各々が料理に箸を伸ばす中、まりんがおにぎりの乗った小皿をメランに差し出した。
「メラン、このおにぎり私が作ったんだけど食べてみて…。」
「うん。」
メランはペタンハンドでおにぎりを掴むとをスルスルと口元へ運んだ。
パクッ、モグモグ…。
桃井三姉妹に教わりながら作ったおにぎりは具にとどまらず、トッピングされているふりかけも手作りしたモノである。
モグモグと口を動かしているメランの様子をまりんはドキドキしながら見ている。
「どうかな…? 」
「うん。美味しい ! 」
まりんの表情がパッと明るくなる。
すると
「まり〜んの作ったこのチキンフラーイ !  Very Goodデース !  ! 」
おにぎりとは別にまりんが作った唐揚げを食べたマイクが絶賛の声を上げた。
「うむ、なかなかの出来映えじゃのう。」
「こりゃあ最高の酒のつまみだな !  ! 」
「ビシッ !  ! (Goodサイン)by御納戸」
「美味しいわよ、まりんちゃん ! 」
皆が口々に誉めるので何だか照れくさい。
「あは〜ん ! ありがとう。でも、ただの唐揚げでそんなに誉められると何かテレちゃうよ」
「照れる事はない。これもウマイぞ、まりん。」
いつの間に手に取ったのか、メランが唐揚げを食べている。
ゴクンと飲み込んだメランがもう一度
「ウマイ」
と言って微笑んだのを見てまりんの顔がボン ! と紅くなる。
「…ありがとう…」
そんな微笑ましい二人を見ている皆の顔にも笑顔が浮かんでいた。

食事の後片付けが終わったまりんはメランへのプレゼントを渡すべく部屋に隠していた袋を取り出した。
「まりん」
いきなり後ろから声をかけられたまりんは飛び上がりそうな程驚き、急いで自分の陰にプレゼントを隠した。
「メ、メラン ! ? 何 ? 」
何やら慌てているまりんに
「 ? 」
となるも
「少し時間を貰えるか ? 一緒に来て欲しいのだが…」
と切り出した。
今度はまりんが
「 ? 」
となるが自分も彼に用があるのでついていく事にする。

メランに抱えられて飛行し着いた場所は浜辺だった。
砂地に降りたメランは自分よりはるかに小さい少女を見下ろした。
「まりん。今日はキリストという人物の生誕前夜祭だそうだが…」
「うん。そうだよ。」
「 “さんた” という老人が善良な子供に贈り物を運ぶ日だと…」
「よく知ってるね、メラン。」
「……」
そこまで話して沈黙したメランだがペタンハンドをスルスルと伸ばし小さな紙袋を差し出した。
「これを…」
「え ! ? あたしに ? 」
コクリとうなづくメラン。
「開けても良い ? 」
「もちろん」
カサカサと紙袋を開けてみると中から出てきたのは紐で連なった薄桃色の貝殻、桜貝のブレスレット。
「わぁ…綺麗… !  ! 」
しかも3枚の貝殻の表面に文字が刻んである。
象形文字にも似たブリガドーンの文字が滑らかに研磨された貝殻の表面に刻まれている。
「これ、何て書いてあるの ? 」
「君の名だ。“まりん”と…。」
「あたしの名前 ! ? 」
再び貝殻を見つめる。
薄い桜貝の表面に文字を彫るのはかなり難しいハズだ。
「大変だったんじゃ…」
「確かに僕の剣では難しいが、シロウの細工用の刃物を借りる事が出来たおかげでそれ程難しくはなかった…」
「御納戸おじちゃんの… ! ? 」
まりんの脳裏に昨日メランが御納戸、マイクと3人で何やら話をしていた姿が蘇ってきた。
あの時、メランは御納戸の彫刻刀を借りていたのだ。
「じゃあマイクもこの事知ってたの ? 」
「僕にクリスマスの事を教えてくれたのは彼だ。彼も純にプレゼントを渡したいから協力して欲しいと…内密にと言われたので君にも秘密にしていた…」
「そうだったんだ…」
桜貝を見つめていたまりんは視線を上げメランを見上げた。
「ありがとうメラン !  ! スッゴク嬉しい !  ! 」
輝く様な笑顔を向ける。
「実はあたしもメランに渡したい物があるの。」
「?」
「これ ! 」
まりんも小さな紙袋を差し出した。
受け取ったメランはしげしげと袋を見つめている。
「…あの…開けてみて」
「あ…うん…」
まさか自分がプレゼントを貰うとは思っていなかったメランはおずおずと封を開いた。
中から出てきたのは掌に収まる程の小さな布製の袋。
手書きで『まりん神社御守り』と書いてある。
その中にはカマボコ板を加工して作った御守り板と願い事の書かれた紙が…。
昨日から縫っていたのは御守りの袋で、台所に行ったのは中に入れるカマボコの板を貰う為。
メランはまりんを見る。
「あのね…、メランはまだクレイスを捜す任務があるでしょ…。だからメランが無事任務を果たせる様に、怪我をしません様に、って…、御守りを作ってみたんだけど…。」
恥ずかし気に話していたまりんはそっと顔を上げてメランを見ると…、そこには優しく微笑むメランの顔が…、愛しい気な眼差しで自分を見つめる彼の笑顔があった…。
ぽ〜っ見惚れるまりん。
「ありがとう…。まりん。最高の贈り物だ。」



メランのプレゼント…。メランの言葉…。メランの…笑顔…。
「あたしも…。あたしも嬉しいよ、メラン。最高のクリスマスだよ !  ! 」
浜辺に寄り添い座る二人の上に満天の星。
『ゲンじいちゃん、モトばあちゃん。あたし幸せです…。』輝く流星が疾り抜けて行った…。




【おまけ】
クリスマス当日。
相談にのってくれたアロマくんと萌ちゃんにもプレゼントをした。
アロマくんはお菓子が大好きみたいだから食べた後に便利なハンカチ入れ。ちり紙も入れられるスグル物 !  ! 萌ちゃんがアロマくんにお菓子をプレゼントしてたからすぐ使ってもらえたの。
萌ちゃんはいつも髪を綺麗にしてるからリボンをあげたんだ。あたしが持ってる一番可愛い布で作ってみたけど気に入ってくれると良いなぁ…。帰りに萌ちゃんのお母さんが焼いたケーキをお土産にって渡してくれた。長屋の皆の分も焼いてあった。皆もきっと喜ぶよ ! 
それから、長屋に帰ってきたらマイクと純ちゃんが楽しそうにお喋りしてたんだ。純ちゃんの首にはあたしのブレスレットとおんなじ桜色の貝のネックレスが着いてたの。マイクと純ちゃんうまくいったみたい。よかったね♪

- END -




※このお話は本編の時間や人物に置ける設定を考慮せずに『まりん&メランが幸せならそれで良い』と云うコンセプトのもとに書かれています。(でもぶる的には離ればなれになった皆が長屋に戻って来れた辺りの時期を想定して書いています)寛大な心でお読み下さい。(ぶる)


まりんとメラン小説ありがと〜!もうイヴなんで急ぎアップしてみたよ。
ぶるの小説の甘々ラブラブっぷり GJ!GJですよ!ヽ(#^ー゜#)v
未熟で申し訳無いけど絵を付けてみました。甘々な2人+皆にメリクリ!
(ほのなか)

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