カオス・ホープ〜混沌の希望〜 《 音滝 洸廉様より 》

第4章 飛鳥最強の鬼神 名を紅鬼
「ねえ前鬼見つかった?」
「あのなー…オレ様はそいつのにおいも知らねえんだぞ。
においもなしにそう簡単に探せっかよ」
前鬼は草むらを分け、開けた間に頭を突っ込んで中を見る。
そこにはとくに何も無い。前鬼は立ち上がると辺りに首を巡らせた。
もう西の空も赤くなり始めている。
夕日が沈んでいるのだ。
「ねえ…前鬼」
「ああ?」
探し物が見つからずムカついている前鬼はいささか怒り気味だ。
しかし小明は慣れたか構わないのか話を進めた。
「あたし達……還れるのかな?みんなの所に…2095年に……」
「……………」
前鬼は小明の言葉にぐっときた。
2095年――それはロキ達が住む、小明と前鬼にとって大切な居場所だった。
小明が次の使役者は誰だろうと不安がっていた。
そんな不安を吹き飛ばしたのはロキ達だ。
人間だったのに転生した。前鬼に付いて行きたくて。
その事を知ってもロキ達は「いいんじゃないか」と。
………そう、言った。
『いいじゃないか。大好きな人に付いて行くのはきっと誰にもからかえない。
胸を張って強く生きろ光鬼。お前は間違った事なんて、これっぽっちもしてないんだから。』
『きっと前鬼様も嬉しかったろうね。光鬼さんって言う大切な人に、こんなに 想われて。こんな人に付いてきて貰って。』
『もし笑う奴がいたら言ってみろよ。前鬼と一緒に殴ってやるぜ!!』
『俺も過去の傷引きずってロキに付いてんだ。 似た者同士だな、光鬼』
暖かい言葉。
嬉しかった。
無くしたくない。
……戻りたい。
還りたい!!
小明のその頬に、小さくも大切な暖かい手が触れてきた。
「還れるに決まってる。無理矢理時間を捻じ曲げてでも還ってやるぜ。」
前鬼は不敵な笑みを浮かべた。
いつも笑う。こんな風に、この最強の鬼神は。
不敵に笑って、自分を包んでくれる。
勇気付けてくれる。
小明はフッと笑った。それは前鬼の大好きな、優しい笑み。
護りたい、無くしたくない、大好きな笑顔。
前鬼にとってこの笑みは、小明は光当然。
永遠の闇と孤独を照らし、自分を助けてくれた光の笑みだった。
「うん……」
………そんないい雰囲気の二人を覗き込む影が…!
「ひゃ〜〜〜いい感じだねえあの二人……」
野菊は樹の影からこっそりと二人を覗き込んでいた。
当然隣には紅鬼がいる…が御本人はまったく興味なさげだ。
「なんだい見ないのかい?」
「イチャこいてる奴見て何がおもしれえんだよ」
ごもっともな意見です紅鬼様(笑)
「…………ん?!」
鼻がヒクっと動いたかと思うと、紅鬼は立ち上がった。
「どうしたんだい?」
野菊は紅鬼を見上げ聞くが紅鬼は前鬼達の向こうを見るばかりで答えない。
「………来る」
「!!」
野菊は慌てて小明達の方を向くがすでに時は遅い。
ぎゃおおおおおおおおおおおん!!!!!!!!!!!!
鼓膜を突き破らんばかりの高い咆哮。
大きな爪が小明に掛けられる前に前鬼が小明に体当たりし、自分もろとも後方に跳んだ。
「紅鬼お行き!!!」
「おう!!」
野菊の命を聞き、紅鬼が大地を力強く蹴り、宙を舞った。
「大丈夫!!!」
「え、ええ…そ、それより紅鬼さんは…!?」
「なあに心配は要らないよ。」
野菊は片目を瞑り、信頼に満ちた眼で紅鬼を見た。
「陰魔獣如き、あいつ一人で何とかなるさ。
だってあいつは最強だもの。」
その言葉に反論したのはもちろん前鬼だ。
「んだと!!!!最強の鬼神はオレ様だ!!!!!」
「はいはい。がんばんなよ目標にそうように」
野菊は対して相手にもせず言う。前鬼はギリギリと歯噛みをした。
小明は切れやしないだろうかとハラハラしたが、その沈黙を破ったのは陰魔獣の叫び声だ。
紅鬼の腕輪から金色の刃が飛び出している。おそらくこれで斬ったのだろう。
『ギギギ……小僧貴様……!!』
ガラスを引っ掻くような耳障りな声を立て、後方にジリジリと下がる陰魔獣。
紅鬼はそれを見たまま、空を掴むように手を上げた。
「来たれ!!!明王斧!!!!」
声と共に紅鬼の頭上に暗雲が立ち込める。
そして雷が紅鬼の手目掛けて落ちてくる。
紅鬼はそれを受け止めると、ブンっと一振りした。
雷が散り、中身が露わになる。
黒い刀身だが、刃は銀の光を放つ、刀身の中央には赤い宝玉が埋め込まれている。伸縮自在の持ち手が付いた紅鬼の背丈までありそうな斧だ。
「行くぜ陰魔獣!!!!!」
紅鬼が犬の形をした陰魔獣のしっぽを跳び台にし、高くとんだ。見事な跳躍力だ。
「鬼神斧術奥義……風斬り!!!!」
紅鬼が斧を一閃させる!!そして一拍置いてから、鮮血が飛んだ。
陰魔獣が呪いの断末魔を上げ、倒れ、黒い霧となって消えて行く。
紅鬼は不敵な笑みを浮かべた。小明はソレを見て心臓が高鳴った。
その笑みはまさしく、鬼神となった前鬼とそっくりだった。
「俺様に勝とうなんざ、百万年早いぜ」
その口調も、強さも、前鬼のように猛々しく、どこか暖かさもある鬼神力も。
小明はその笑みが消えるまで、紅鬼から目が離せなかった―


≪続≫