陰魔獣を倒した後・・・
「本当に・・・こんなにして・・・」
野菊は紅鬼の攻撃でできた焦土を見てため息をついた。
紅鬼は知るかと一人ごちて顔を背けた。
彼の横顔が夕日の色に染まっていくのを眺め、野菊は夕日とは逆の方を見た。
「紅鬼、この子達頼むよ。私は村の連中に、退治した事を告げてくる」
野菊はそう言うと村がある方に駆けて行った。
残された小明達は暫く誰も言葉を発さなかったが、小明が沈黙を破り、紅鬼に口を開いた。
「あの……紅鬼さん」
「ん?」
胡座をかいて座っていた紅鬼は小明を見上げた。
土手に座っているので見下ろす形になっているわけだ。
「前鬼に、何か見覚えありませんか?」
小明はこちらに背を向けて眠っている前鬼を指さしていった。
「………ぜんき……か」
紅鬼は目を細め、前鬼を見た。
「あるんですか!?」
小明が声を荒げる。紅鬼は後頭部をボリボリと掻いて「う〜ん」と唸った。
しかしその時いきなり紅鬼が小明を押し倒した。
「きゃっ!!」
草むらに倒されたので痛みはそんなにないが、驚きは隠せない。
それもそうだろう。
さっきまで小明がいた場所に、金色の液体らしきものがよぎったのだ。
紅鬼は小明を押し倒し、瞬時に身を翻しかわしていた。しかし金色の液体は鞭のようにうねり、眠っている前鬼に襲い掛かる。
紅鬼は前鬼の上に覆い被さり、攻撃を代わりに背中で受けた。
「ぐぅっ!!!!」
前鬼はその声に反応し、はっ!!と目を覚ました。
しかし紅鬼は前鬼に何か言わせる間も与えず、前鬼を抱えると身を右に捌いて第二の攻撃をかわす。
前鬼を抱いたまま、紅鬼は草むらに転がった。
紅鬼は起き上がるとそのオレンジの瞳を凝らし、遥か向こうを見た。
紅鬼が何かを捉えたらしく、目を細める。
しかし………
ギュオ!!!
鞭が紅鬼に向かって襲ってくる。しかし小明から見てその攻撃は前鬼を狙っているように見えた。
「ちぃ!!!」
舌打ちし、前鬼を片手で抱えたまま身を飛び起こし、その場を離れた。
しかしその攻撃は止まない。
いや、どんどん威力が強まっているように見える。
いままで草を薙ぎ払っていただけの鞭が、石や地面さえも砕いている。
ピシッ!と音がした。
紅鬼と前鬼もそれを聞いて、目線を下に向ける。
地面が、割れている。
「「まさか!!!!!」」
前鬼と紅鬼が声を合わせた。
「危ない!!!!!」
起き上がっていた小明が叫ぶ。
ビシィ!!!!!と大きな音がし、地面が裂け割れた!!!
そこから飛び出したのは湯ではない。金色の液体。
金色の液体が紅鬼と前鬼を下から襲う!!
しかし紅鬼は瞬間的に身を引き、空中に逃れた。だが、
「甘い」
小明の後ろで声がした。小明が後ろを向く。
金色の髪を首の後ろで束ねた黒い服の上に白い羽衣を着た青年が宝玉の付いた杖を掲げていた。掲げた杖を紅鬼に向ける。すると金色の液体は紅鬼と前鬼に向かって迫っていった。
空中では攻撃は避けれない!!
「………!!前鬼、紅鬼さん!!!!!」
小明が叫ぶ。
金色の液体が、紅鬼と前鬼に迫っていった
「やめてーーーーー!!!!!!」
2095年
「………!?」
ロキが目を見開いた。それを見た昴が
「どうしたの?」
と、ロキに訊ねた。ロキは何でもないと言い、顔を上げた。
(何か聞こえたような気がしたが、気のせいか……)
ロキは自分の右耳に障り、心の中で思ったが、口には出さないでおく。
彼らは今、式神町はずれの荒野にいた。そしてそこには、般若の面を上に付けた赤一色の大きな門がそびえ立っていた。
これが。
「鬼門………」
ロキは小さく、呟いた。
≪続≫
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