ある夜、前鬼はいつもの様に街を歩き回っていた。
「チクショ―…、手掛かりなしか。 ドコにあるんだ?憑依の実は…。」
探し始めてかれこれ3時間。
未だに収穫はゼロのままだ。
「ったく、大体小明の作る飯だけじゃ足りねぇんだよ!」
それをあいつときたら……と何やらごにょごにょ言っている。
実は3時間前にこんなやり取りがあった。
―3時間前の役家―
「おい、 小明 おかわり!」
「もう無いわよ。」
「なに!? たったこれっぽっちで俺様が満足すると思ってんのか!?」
「あんた 何杯食べたと思ってんのよ。 丼飯6杯よ! 6杯!!」
「けっ、たかだか6杯の飯で何言ってやがる。 たまには俺様が満足する
ような飯を作ってみやがれ。」
カチ――ン!
「大飯喰らっておきながらその言い草はないでしょ!!
文句があるなら1円でも食費を入れてから言いなさい!」
言ってはいけない一言で小明に追い出されてしまった。
「 ……。 “ショクヒ”って何だ!?」
聞いた事の無い言葉に首を傾げつつ、しぶしぶ憑依の実を探しに出掛けた訳である。
その後、街を彷徨う事 数時間。
前鬼は式神町近隣の街まで来ていた。
夜も大分更けてきたが街は明かりを落とす事無く賑わっている。
「人間共の村も喧しくなったもんだぜ。
しかも…こう広くちゃ埒があかねぇ。 一旦戻って出直すか。」
騒々しい街の様子に辟易した前鬼は式神町に戻るべく踵を返した。
街明かりの影の中を野生動物そのものの動きで跳び、走り抜ける。
中心地の喧騒が少しずつ遠ざかり、人通りも途絶えてきた。
そして、とある路地へとさしかかった時、事件は起こった。
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